能登半島沖の群発地震と断層破壊地震


一般的に地震が発生すると、震源断層面に沿って破壊が進行し、その余震が断層面沿いに分布します。ところが、群発地震といわれる地震群の場合、微小地震が地下から湧いてきたようなボリュームタイプの分布を示します。ここでは、能登半島沖の群発地震が活発な時期を一元化データで追跡しながら、断層破壊が顕著なM5.0以上の地震に注目してみました。
データの検索範囲は、図1の長方形の範囲です。期間は、2003年1月から2025年3月までです。
群発地震の状態について、領域内で1年間の地震件数が600件以上のとき「活発」、600件未満のとき「静穏」状態としてみました。

2003年 - 2017年

能登半島沖の群発地震は、門前沖(猿山沖を含む)と珠洲沖に集中しています。図1にみるように5つの領域を設定しました。
・2007/03/25 M6.9 門前沖地震が発生する前は、表2にみるように各領域とも静穏状態でした。
・2007年の地震件数の推移をみると(図3-1)、3月25日の門前沖地震で門前沖領域では1日に発生した地震件数が1000件に近づくほど活発になりましたが、6月のM5.0では顕著な地震件数はみられません。また、門前沖領域以外では、隣接する海士沖領域で他の領域に較べて地震件数が少し増えています。
・2008年前半まで門前沖領域では活発でしたが(図4-1)、その後は2017年まで他の領域と同様に静穏状態になりました(表2)。

図1 群発地震の領域と地震 (1)

表1 群発地震の領域
領域楕円の中心長径km短径km傾き高さkm主な地震
門前沖領域37.20, 136.60351033°202007 M6.9, 2007 M5.0
珠洲沖領域37.57, 137.32231633°20(1933/02/07 M6.6)
穴水-能都領域37.26, 137.1916733°16 
海士沖領域36.97, 136.4212580°20 
富山トラフ西縁領域37.95, 137.65201650°20 

図2-1 2006年 地震件数の推移
図2-2 2006年 震源分布

図3-1 2007年 地震件数の推移
図3-2 2007年 震源分布

図4-1 2008年 地震件数の推移
図4-2 2008年 震源分布

表2 能登半島沖の群発地震(2003年-2017年)
2003年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖5M2.00静穏 
・珠洲沖111M3.00静穏 
・穴水-能都31M3.10静穏 
・海士沖3M2.00静穏 
・富山T西縁11M3.20静穏 
全域221M4.30静穏 
2004年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖25M3.10静穏 
・珠洲沖78M3.00静穏 
・穴水-能都30M2.00静穏 
・海士沖0M0.00静穏 
・富山T西縁14M2.20静穏 
全域215M3.60静穏 
2005年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖9M1.50静穏 
・珠洲沖70M4.10静穏 
・穴水-能都26M2.30静穏 
・海士沖3M1.30静穏 
・富山T西縁12M1.90静穏 
全域192M4.30静穏 
2006年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖15M3.10静穏 
・珠洲沖75M3.30静穏 
・穴水-能都146M3.70静穏 
・海士沖1M0.60静穏 
・富山T西縁20M2.90静穏 
全域333M3.70静穏 
2007年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖10781M6.95断層破壊M6.9,M5.3 2件,M5.1,M5.0
・珠洲沖89M4.00静穏 
・穴水-能都27M2.80静穏 
・海士沖236M4.30静穏 
・富山T西縁26M2.60静穏 
全域11568M6.95断層破壊あり 
2008年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖1633M4.80活発M4.8 2件
・珠洲沖62M2.80静穏 
・穴水-能都41M2.50静穏 
・海士沖22M2.40静穏 
・富山T西縁8M2.30静穏 
全域2306M4.80活発あり 
2009年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖462M3.90静穏 
・珠洲沖55M3.40静穏 
・穴水-能都37M3.10静穏 
・海士沖8M2.10静穏 
・富山T西縁16M2.20静穏 
全域682M3.90静穏 
2010年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖290M3.40静穏 
・珠洲沖76M3.20静穏 
・穴水-能都28M2.20静穏 
・海士沖5M2.10静穏 
・富山T西縁31M3.60静穏 
全域518M4.00静穏 
2011年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖191M2.90静穏 
・珠洲沖61M4.30静穏 
・穴水-能都22M3.10静穏 
・海士沖13M2.30静穏 
・富山T西縁18M2.90静穏 
全域403M4.30静穏 
2012年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖152M3.60静穏 
・珠洲沖109M3.00静穏 
・穴水-能都25M2.60静穏 
・海士沖4M1.40静穏 
・富山T西縁40M2.70静穏 
全域392M4.00静穏 
2013年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖154M3.30静穏 
・珠洲沖35M2.50静穏 
・穴水-能都23M2.30静穏 
・海士沖2M0.90静穏 
・富山T西縁7M1.80静穏 
全域289M3.30静穏 
2014年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖161M4.10静穏 
・珠洲沖111M2.70静穏 
・穴水-能都35M1.90静穏 
・海士沖0M0.00静穏 
・富山T西縁22M2.80静穏 
全域387M4.10静穏 
2015年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖103M3.00静穏 
・珠洲沖27M2.80静穏 
・穴水-能都35M4.40静穏 
・海士沖1M2.50静穏 
・富山T西縁12M2.30静穏 
全域266M4.40静穏 
2016年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖123M3.90静穏 
・珠洲沖55M2.90静穏 
・穴水-能都26M3.80静穏 
・海士沖5M2.60静穏 
・富山T西縁16M2.00静穏 
全域311M3.90静穏 
2017年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖152M3.60静穏 
・珠洲沖54M2.70静穏 
・穴水-能都42M2.60静穏 
・海士沖2M2.90静穏 
・富山T西縁11M2.30静穏 
全域389M3.70静穏 
活発:地震件数が年間600件以上、静穏:600件未満

2018年 - 2025年

静穏状態が続いていた門前沖領域で、2020/03/13 M5.5が発生しました。
表4にみるように、断層破壊は門前沖領域で起こりましたが、微小地震を含む地震件数をみると、2018年から珠洲沖領域の件数が門前沖の件数を上回っています。
図5にみるように、2021年以後、珠洲沖領域で断層破壊が連続して発生します(2021 M5.1, 2022 M5.4, 2023 M6.5)。珠洲沖領域に集中。
2024/01/01 M7.6が珠洲沖領域で発生。図9-2にみるように、全域に連動して破壊が進行しました。
門前沖領域では01/01 M5.8 (領域のすぐ近くでM6.1)、珠洲沖領域では前震・本震・余震でM5以上が11件、さらに富山トラフ西縁領域でも01/09 M6.1が発生。
さらに海士沖領域で11/26 M6.6が発生しました。

図5 群発地震の領域と地震

表3 群発地震の領域 (2)
領域楕円の中心長径km短径km傾き高さkm主な地震
門前沖領域37.20, 136.60351033°202020/03/13 M5.5
珠洲沖領域37.57, 137.32231633°202023/05/05 M6.5
2024 M7.6, 2024 M6.0
穴水-能都領域37.26, 137.1916733°16 
海士沖領域36.97, 136.4212580°202024/11/26 M6.6
富山トラフ西縁領域37.95, 137.65201650°20 

図6-1 2021年 震源分布
図6-2 2021年 地震件数の推移

図7-1 2022年 地震件数の推移
図7-2 2022年 震源分布

図8-1 2023年 地震件数の推移
図8-2 2023年 震源分布

図9-1 2024年 地震件数の推移
図9-2 2024年 震源分布

表4 能登半島沖の群発地震(2018年1月-2025年3月)
2018年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖158M2.60静穏 
・珠洲沖634M2.90活発 
・穴水-能都26M3.20静穏 
・海士沖0M0.00静穏 
・富山T西縁24M2.20静穏 
全域931M4.00活発あり 
2019年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖153M3.10静穏 
・珠洲沖219M3.80静穏 
・穴水-能都31M1.90静穏 
・海士沖4M3.00静穏 
・富山T西縁13M2.30静穏 
全域505M3.80静穏 
2020年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖419M5.51断層破壊M5.5
・珠洲沖611M3.00活発 
・穴水-能都30M2.00静穏 
・海士沖11M3.60静穏 
・富山T西縁9M2.80静穏 
全域1156M5.51断層破壊あり 
2021年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖166M2.40静穏 
・珠洲沖12032M5.11断層破壊M5.1
・穴水-能都32M4.10静穏 
・海士沖27M3.10静穏 
・富山T西縁9M2.20静穏 
全域12347M5.11断層破壊あり 
2022年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖71M2.60静穏 
・珠洲沖22848M5.42断層破壊M5.4, M5.0
・穴水-能都29M1.60静穏 
・海士沖10M3.40静穏 
・富山T西縁10M2.30静穏 
全域23067M5.42断層破壊あり 
2023年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖102M2.50静穏 
・珠洲沖27965M6.55断層破壊M6.5,M5.9,M5.4,M5.0 2件
・穴水-能都36M1.60静穏 
・海士沖9M1.90静穏 
・富山T西縁15M2.70静穏 
全域28279M6.55断層破壊あり 
2024年
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖19728M5.85断層破壊領域の近くで01/01 M6.1
・珠洲沖19338M7.611断層破壊M7.6,M6.0,M5.9,M5.8等
・穴水-能都230M3.80静穏 
・海士沖3604M6.62断層破壊11/26 M6.6, M5.0
・富山T西縁2937M6.11断層破壊01/09 M6.1
全域66844M7.626断層破壊 多数 
2025年(3月まで)
場所地震件数最大MagM5以上件数活動性備  考
・門前沖937M4.70活発 
・珠洲沖967M3.70活発 
・穴水-能都8M1.20静穏 
・海士沖1323M4.90活発 
・富山T西縁74M3.80静穏 
全域4169M4.90活発あり 
活発:地震件数が年間600件以上、静穏:600件未満



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