2004年中越地震 本震M6.8の断層を探る


2004年中越地震

中越地方の周辺には、十日町断層、悠久山断層、六日町断層帯などの活断層が確認されていますが、 2004年中越地震は、既知の活断層ではなく伏在断層の断層面で発生したとされています。 この伏在断層を震源断層データから探ってみました。

2004年中越地震では余震でもM5、M6クラスの余震が多く発生しました。中越地域の地下構造が複雑で、 2004年中越地震本震が発生した伏在断層だけでなく、周辺の活断層でも地震活動が発生したとされています。
図1には、2004年中越地震本震M6.8の震源断層面(国土地理院モデル)、震源球(防災科研の解析した値を使用)、六日町起震断層の小出断層セグメントの断層面(傾きは、断層面上部を30°、下部を40°としました)を描画。図には、1998/02/21 M5.2の震源断層面も描画しています。

図1 2004年中越地震本震M6.8

表1 2004年中越地震本震の震源断層モデル(国土地理院)
位置長さ走向傾きすべり角Mw
37.40, 138.96, 2.8km20.6km10.2km210°53°92°6.6
位置は矩形の上端左端

表2 2004年中越地震本震の初動解データ(防災科研)
震源位置解析深さM節面1節面2
37.2895, 138.8703, 13.08km5km6.8212°,47°,93°27°,43°,87°
震源位置は一元化データによる

表3 小出断層の断層面スペック(産総研 活断層データベース)
位置長さ走向傾き傾斜面
37.3138, 138.995020km10km203°30°西側傾斜
位置は矩形の上端左端。深さを0kmで描画しています。

※「2004年新潟県中越地震の地表地震断層」(鈴 木 康 弘、渡 辺 満 久、廣 内 大 助)、 「新潟県中越地震のメカニズム解明に挑む」六日町盆地西縁断層帯の北方延長部における地表変形調査 (独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)によると、 六日町起震断層の小出断層、さらに小平尾(おびろう)断層沿いで「断片的」な地表の変位が報告されています。

本震データ群の抽出

気象庁の震源データ解析では、主に3つの断層、本震(M6.8)の断層、最大余震(M6.5)の断層、10/27 M6.1の断層が一連の余震活動を活発化させたとしています。(地震調査委員会「新潟県中越地方の地震活動の評価」)
ここでは、本震データのスペックに近い余震データの中から震源断層面の位置関係にマッチするデータを抽出しました(表4)。
図2にみるように、中越地震本震の初動解パラメータと類似スペックをもつデータは、本震の周辺だけでなく、小出断層の震源断層面まわりにも分布しています。
六日町起震断層には、小出断層の他に石打断層というセグメントがありますが、こちらにマッチする余震データはありませんでした。

図2 2004年中越地震 本震データ群の分布

表4 2004年中越地震 本震データ群
No.年月日M節面1節面2備考
11998/02/21M5.238°,49°,94°213°,41°,86°rec10370
22004/10/23M6.8212°,47°,93°27°,43°,87°本震 rec18879
32004/10/23M6.3218°,47°,107°14°,45°,73°rec18880
42004/10/23M4.716°,52°,76°217°,40°,107°rec18886
52004/10/23M3.71°,57°,66°220°,40°,122°rec18895
62004/10/24M3.7216°,49°,109°9°,44°,70°rec18897
72004/10/24M4.3357°,56°,69°211°,39°,118°rec18899
82004/10/24M3.6339°,54°,58°206°,47°,127°rec18901
92004/10/24M3.5204°,45°,94°18°,45°,86°rec18905
102004/10/24M4.3210°,46°,79°45°,45°,101°rec18909
112004/10/24M3.7202°,47°,75°43°,45°,105°rec18919
122004/10/25M5.313°,50°,70°222°,44°,112°rec18928

図3 2004年中越地震 本震の断層領域

類似スペックデータの分布範囲から断層領域(直方体)を求めると、領域の長さ 31km、幅 14km、高さ 5km、走向212°、傾き47°でした。

まとめ

2004年中越地震の本震M6.8は、小出断層の震源断層面の西側にあった伏在断層で発生しました。 この伏在断層では、1998年にもM5.2の地震が発生していました。
本震の断層領域が震源断層面よりも南側に伸びているのは、 小出断層の震源断層面沿いに本震との類似スペックデータが分布しているからで、本震を発生させた伏在断層と小出断層は連続していると考えます。

図4 断層面の関係


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